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原材料:楮(こうぞ)

和紙の命の部分です。根幹である楮の出来、不出来がその後の工程から最終製品の品質までを決定づけます。弊社でおもに取り扱っておりますのは、日本国産、パラグアイ産、中国産、タイ産の4種類。それぞれに特徴があり、最終製品やユーザー様のオーダーにより使用する楮を変更し、多岐に渡るニーズにお応えしております。手漉きの時代から椿和紙に携わり、時代とともに歩んできた弊社のみぞ知る、地域の楮の特性を存分に活かした和紙づくりを行っております。

 

釜煮(煮熟)

楮の良し悪しは自然の恵みでありますが、ここからは技術の差がものを言うところです。楮の年齢、加工する季節や時間、釜を煮る際に使用する薬品、丁寧かつ、まんべんない原料の反転・・・これらすべてが最終製品にまでひびいてきます。この加工により、植物の繊維を接着しているペクチン、リグニンという物質を取り除き、紙の原料として繊維だけの状態に近づけていきます。ここでもやはりお客さまの要望により、加工方法を変更します。その要望はコスト的なものから究極に手を加えるものまでさまざま。全社員が入社後この部署を経験することからもその大切さがお分かりいただけるかと思います。

 

水洗い・ちり取り

釜煮(煮熟)が済み、熟成期間を終えると、いよいよ水洗・ちり取り作業に移ります。水洗作業は弊社独自のシステムにより、常に流水にさらされている状態を人工的に作り出しております。かつて先人が川のなかで楮を洗っていたかの如く。ここでは、木々が擦れ合って出来た傷などを取り除きます。それらは漂白しても白くならず、紙面に残るため、この作業は大変重要な部分です。数日間にも及ぶ水洗作業を終えるとちり取りを行います。最終的に紙になるまでに、5か所・5人の異なる眼と手によるちり取り作業。この惜しまぬ手間から世界一の紙がうまれるのです。

 

打解

ちり取りが終わると打解作業です。この作業でもやはり丁寧に時間をかけ、まんべんなく楮の繊維をほぐしてゆきます。ここでも元々の楮の出来、釜煮、熟成期間と季節により、かける時間が変わります。近年私どもでは“感”、“塩梅”といったものを数値化することに尽力してきましたが、“楮繊維のほぐれ具合”だけはデータ化することのできない領域です。丁寧な打解により、楮は一本一本の繊維へと状態を変え、和紙へと生まれ変わる準備を整えていきます。

漂白

水洗・ちり取り後の原料はとびいろ、いわゆる黒みを帯びた茶色をしています。文化財保存修復用等、用途によっては未晒し(漂白せずに)のまま漉く場合と、原料により色合いが異なるため、再現性を高めるために繊維を漂白する場合もあります。和紙製造のうえで漂白方法も数種類あり、おもなものとして天日漂白、塩素漂白、塩素未使用漂白等が挙げられます。通常機械漉き楮和紙業者は塩素標白を行っておりますが、近年私どもでは、塩素を使用せずに漂白する独自の方法を開発しました。一般的な塩素漂白の紙には残留塩素として塩素が紙に残り、黄ばみや変色、劣化の原因にもなってしまいます。それらを防ぐために開発した私どもの和紙は「伝統の土佐和紙に新たな原料処理を施したオリジナル和紙の開発と販路開拓」として、高知県及び四国経済産業局よりその加工方法を活かした事業を認定いただいております。

 

抄紙(繊維の撹拌)

手をかけた原料を水中に一本一本むらなく分散させる作業です。ちりを取り、繊維をほぐした原料でも植物繊維の水に対する比重は約1.5倍。水だけの中で混ぜ合わせてもすぐに沈殿してしまいます。そこで“ねり”を使用します。“ねり”とは原科溶液の粘度を高めるためのもので、接着力はまったくありません。この“ねり”も気温、最終製品により異なる調合薬品で粘度を調整します。まず原料を水の中で撹拌し、水と繊維をなじませます。その後、“ねり”と水を混ぜ合わせ、紙の種類に応じた粘度になるよう調節し、抄紙機へと流していきます。

 

抄紙(抄紙機)

製品によって異なる工程を経て、いよいよ抄紙機に原科を流していきます。私どもの抄紙機は2台あり、いずれもベースは懸垂式短網抄紙機です。設計、製造とも同じ製作所のマシンですが、それぞれに個性があり、同じ原料を使用しても仕上がりの風合いが異なります。用途により、抄紙機を選ぴますが、基本部分は同じであり、手漉きの時代に簀桁(すけた)をゆすって繊維を縦横均等にからませていた工程は「抄紙網」として機械化されています。ここでも白水(繊維溶液)の作り出す波の大きさや伸び具合を注意深く観察し、調整しています。

 

巻取り

繊維がシート状に重なり、非常に繊細な状態のものを原料ごとに異なる温度で最終製品へと仕上げていきます。私どもは使用用途によって、さまざまな種類の原料を使用しておりますが、やはり大部分は楮です。その繊維の主成分は、多数のプドウ糖が長く一列に連なった鎖状の高分子セルロース。セルロース分子は親水性が高く、水とよくなじみ、繊維を水に浸すと膨張します。その水分を乾燥させると、それまで水と結合されていた部分が繊維と結合します。この繊維間の結合を水素結合と呼びます。機械化されているとはいえ、楮の繊維は繊細なもの。低い温度で長い時間をかけて乾燥させていきます。

 

仕上げ

最終の抄紙まで繊細につくられた椿和紙は、やはり仕上げにも神経を使います。特に他社の追随を許さない世界一薄い椿和紙2.0g/rrlの典具帖紙は気を抜くとすぐにシワが入ったりするほどの繊細な透明感を持ちます。こららをお客様のご使用用途により、より使っていただきやすいカタチヘと仕上げていきます。こうして土佐の山のなかで丁寧に作られた私どもの和紙は日本国内はもとより、世界中のご愛用いただいている方々のもとへ届けられていくのです。

 

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